中核派とは何か?ー3.11以降再活性化

「中核派」といえば、1960年代〜1970年代に活動していた過激派組織というイメージがあるが、では実際にどういう組織なのだろうか。

2月29日、京都府警は中核派全学連委員長ら3人を逮捕、後日他3名も逮捕されている。容疑は、昨年10月、安全保障関連法成立後に京都大で抗議行動を行い授業を妨害したものとされている。

京大の熊野寮は中核派の活動拠点とされ、他に東京都江戸川区や大阪市、福島市、那覇市などにも拠点がある。

「中核派」といえば、1960年代〜1970年代に活動していた過激派組織というイメージがあるが、では実際にどういう組織なのだろうか。また現在はどうなっているのだろうか、設立から振り返ってみたい。

中核派の誕生

まず、中核派とは、「革命的共産主義者同盟全国委員会」の通称で、スローガンとして「反帝国主義・反スターリン主義の旗のもと万国の労働者団結せよ」を掲げている。「反帝国主義・反スターリン主義」とは、資本主義だけではなくソ連や中国などの社会主義も否定するものだ。

日本共産党が1955年に武装闘争路線を放棄したのは以前報じた通りだが(関連記事:なぜ共産党は嫌われているのか?ー設立から振り返る)、これに対抗して新組織が結成された。こうした従来の日本共産党や日本社会党などを批判し、暴力革命を掲げる政治勢力は新左翼と呼ばれ、中核派、革マル派、革労協が三大組織となっている。

1959年、「革命的共産主義者同盟」を離党した黒田寛一(当時32歳)と本多延嘉(当時25歳)は「革命的共産主義者同盟全国委員会(中核派)」を結成、しかし次第に党の運営方針などを巡って対立を深めた黒田と本多は分裂し、60年安保闘争からまもない1962年黒田は「日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派(革マル派)」を結成する。

内ゲバの激化

その後はベトナム反戦運動や70年安保闘争などで激しい街頭闘争を繰り広げることになる。

1975年には中核派の最高指導者、本多延嘉が革マル派に殺害されたことで、血で血を洗う壮絶な「内ゲバ」が展開される。これにより多数の死傷者が出た。

80年代以降は成田空港の建設反対闘争や爆弾テロなど過激な活動を行ったが、激しい内ゲバや警察による厳しい取り締まりで、活動家の減少や高齢化が進み、衰退の一途を辿った。

3.11以降再活性化

1960年代に約5.3万人いたとされる過激派の構成員(革マル派なども含む)は現在約1.3万人にまで縮小している。最大組織の一つである中核派は約3000人の構成員が存在し、今も若者が大学での勧誘などによって参加している(学生組織は全日本学生自治会総連合、通称全学連と呼ばれる)。だが、かつては大学の学園祭が資金源とされていたが、それらの中止や学校施設からの締め出しによって活動は縮小している。

近年関東で最も活発なのは法政大学で、2006年には全学連が法政大学に設置した立て看板撤去に抗議した中核派構成員ら29名(うち法大生は5名)が逮捕されている。先日の京大で逮捕された中核派全学連委員長の齋藤郁真(現27歳)は法政大学を退学処分になっている。

最近は暴力性や党派性を隠し、震災で関心が高まった反原発やボランティア活動などを通し、浸透を図っているとも言われる。震災後には、脱原発を目指す学生団体「NAZEN」を創設。ただ、代表に就いていた元全学連委員長の織田陽介は2011年3月31日に東京電力へのデモで違法行為を行ったとして逮捕されている。

また、2014年東京都知事選に出馬した鈴木達夫弁護士は中核派から支持を受け、先日の京大での妨害行為についても「京大反戦ストへの弾圧弾劾!」というタイトルでブログ記事を書き、警察や安倍政権を批判している。

倒すか倒されるか

テレビ東京が中核派の拠点である「前進社」の建物内部を取材し、2015年7月10日の「NEWSアンサー」で放送した内容によると、中核派は安保法案の際にも「打倒安倍政権」を掲げたデモを何度も行い、その参加者の多くが20代の若者だという。

取材された参加者の若者は参加したきっかけを、「原発問題や戦争問題に関心を持って活動をはじめた」、「3.11以後、大学が原発や国策に協力してきたことが暴かれてきて、良くないと思った。現実にキャンパスでビラがまけないとか戦争反対の声を上げられないという事実を知って、これはおかしいなと」と述べている。

26歳の女性構成員は、「革命のためなら政府や国の人の命を殺めることもあるのか」という質問に対し、「まあ、そうですね...ほんとに、倒すか倒されるかだと思うんですよ」と答えた。

拠点である「前進社」(東京・江戸川区)のビルには20~70代の約100人の構成員が居住し、警視庁公安部が24時間監視している。警察や公安調査庁は、中核派を「国家を暴力的に破壊・解体することを目指している団体」だと認定している。

海外の過激派組織と同様に、こうした若者の根底には日々の不満や将来への不安がある。実際、真面目に社会問題を考えている印象を抱くが、その解決策が「暴力」に行ってしまうのは非常に危うい。

テロ行為というと遠い世界の話のように思えるかもしれないが、未だに日本にもこうした過激派組織が存在し、3.11以降の不安の高まりと同時に参加する若者が増えている。

暴力や過激なデモが起きるのは権力中枢との隔絶が問題にあるように思うが、現在アメリカ大統領選で行われているような対話集会などのより直接的に意見を交わす場など、不満を平和的に届けられる環境を作っていく必要があるかもしれない。

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(2016年3月8日「Platnews」より転載)

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