福島第一原発、凍土壁が十分に凍らない状態

福島第一原子力発電所の汚染水が海に流れだすのを防ぐために建設が進められている「凍土遮水壁(凍土壁)」が、十分に凍っていない状態であることがわかった。

福島第一原子力発電所の汚染水が海に流れだすのを防ぐため、東京電力は汚染水の一部を凍らせて氷の壁をつくる「凍土遮水壁(凍土壁)」の建設を進めているが、凍結を始めてからおよそ1カ月半がたっても十分に凍っていない状態であることがわかった。

凍っていないことが確認されたのは、2号機の海側にある「トレンチ」と呼ばれる部分に建設されている凍土壁だ。トレンチは配管やケーブルを敷設するための溝・トンネルを指す。2号機ではタービン建屋とトレンチが地下でつながっているため、タービン建屋から高濃度の汚染水がトレンチに流れ込み、そこから汚染が広がる状態になっていた。

東電はトレンチ内の汚染水を抜き取るため、タービン建屋とトレンチの接続部分に凍土壁の整備を進めており、4月28日から凍結を開始。しかし、6月に入っても、十分に凍っていない状態だった。6月16日に行われた東電の記者会見の内容を、NHKニュースが報じている。

内部の温度を測ったところ、ことし4月末から凍結を始めたにもかかわらず、いまだに一部が凍っていないことが分かりました。トレンチ内にある構造物が障害となって、均等に汚染水を冷やすことができないことに加え、トレンチの中で汚染水が常に流れていることが原因とみられていて、東京電力は汚染水の流れを抑えたり、凍結用の配管を増やしたりして改善を図ることにしています。

東京電力では今月中に2号機のトレンチの止水を終え、来月から中にたまった汚染水を取り除く計画でしたが、計画どおりに氷の壁が完成するかどうかは不透明な状況だとしています。

(NHKニュース「地下トンネルの汚染水 十分に凍らず」より 2014/06/17 08:20)

凍土壁はもともと、土に管を通して冷却材を流しこむことで、土中の水分を凍らせる技術だ。水の中に直接、配管を通して凍らせることはこれまで行われておらず、また、福島第一原発のような配管などの支障物が多い場所での凍結はうまくいくかどうかも疑問視されていた。

そのため東電では、事前にモックアップ試験を実施。支障物が無い場合と、ある場合の両方で試験を行い、支障物が存在しても凍結されることが確認されていた。東電は今後、トレンチの外側から冷やすなどの追加の作業を検討しているという。

モックアップ試験:支障物が無い場合

モックアップ試験:支障物がある場合

なお、福島第一原発では、2号機海側トレンチの凍土壁整備のほか、1号機から4号機までを取り囲む1.5kmの凍土壁の整備にも6月2日に着手している。福島第一原発の地下には、数多くの埋設物があり、凍結管と埋設物の交差ポイントも、山側に76カ所、海側には約90カ所存在することになるという。

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