保育士不足の原因は「給料が低いから」? 待機児童問題の解決策はあるのか

保育士の資格があるのに保育の仕事を希望しない理由として、「賃金が合わない」点をあげる人が半数近く存在することが厚生労働省の調査で分かった。どのような状況なのだろうか。
Chika Igaya

賃金があわないから保育士になるのは嫌--。

保育士の資格があるのに保育の仕事を希望しない理由として、「賃金が合わない」点をあげる人が半数近く存在することが厚生労働省の調査で分かった。

調査は今年5月に、待機児童が50名以上存在する市や特別区を管轄するハローワークで実施。男性27名、女性930名から回答を得た。

保育士への就業を希望しない理由を複数選んでもらったところ、最も多かったのが「賃金が希望と合わない」と回答した人で47.5%を占め、「他職種への興味」が43.1%、「責任の重さ・事故への不安」が40.0%と続いた。

年代別に見たところ、20代〜40代の人では「賃金が希望と合わない」「他職種への興味」を選んだ人の割合が多かったが、「責任の重さ・事故への不安」を選んだのは、40代〜60代以上の人が多かった。また、20代〜30代の人の回答では、「休暇が少ない・休暇がとりにくい」を選んだ人も多く見られた。

NHKニュースは保育士の賃金事情について次のように報じている。

保育士の平均賃金は21万4000円余りで、全職種の平均を10万円余り下回っているため、国は今年度から勤続年数に応じて賃金を上乗せできるよう保育施設に新たな補助金を支給して待遇の改善を進めています。

また厚生労働省は乳幼児の死亡事故を防ぐために自治体が行っている研修をハローワークの窓口でも紹介し不安を解消していきたいと話しています。

(NHKニュース「保育士希望せず 理由の半数は「賃金」」より。 2013/10/21 04:13)

保育園に勤務している人に、勤務内容と比較した給与に保育士の賃金について聞いた厚生労働省の調査によると、次のような意見も出ている。

  • 資格を持つ専門職としては安く、コンビニやスーパーのバイトよりも時給が安い。(20代)
  • 資格・経験の有無にあまり差がない。能力手当(技能手当)がつかない。(30代)
  • 時給が何年もあがらない。(40代)

(厚生労働省「潜在保育士ガイドブック」より。)

保育士の賃金については、インターネットでも次のような意見が出ている。

厚生労働省によると2017年度末には、保育士が約7.4万人も不足することが見込まれるという。安倍首相は今年4月、「待機児童解消加速化プラン」により、2013、2014年度の2年間で20万人分、2017年度までに40万人分の保育の受け皿を確保して、「待機児童ゼロ」を目指すと発表した。この「待機児童解消加速化プラン」を推進するにあたり、保育を支える保育士の確保が重要になってくるが、現状の保育士の求人状況をみても、ハローワークにおける有効求人倍率は1倍を超過する状況があり、保育士の確保は喫緊の課題となっている。特に東京都は、月にかかわらず有効求人倍率が1を超えている状態だ。

政府は今年4月から、保育士の賃金を改善する補助金制度を設け、保育士の給与に上乗せしている。ところが、上乗せされている額は月額1万円程度で、全職種の平均給与との差はあまり縮まっていない。

国は待機児童解消のために、定員19人以下の「小規模保育」などを広げようとしており、10月18日、小規模保育の認可基準を都道府県に通達した。しかし、「ハコ」は増えても「ヒト」が増えないのであれば、待機児童問題の解決にならないとの懸念もある。政府は小規模保育において、保育士の資格がなくても保育に従事できる人の割合を増やすことで対応するとした。

保育の質に対する不安もある。仙台市では、小規模保育で職員に占める保育士の割合を3分の2以上とする方針を決めた。

慢性的な保育士不足に配慮し、国は保育士の割合を「2分の1以上」に緩和したが、「全職員に資格の保有を義務付ける認可保育所に比べ、保育の質が低下する」との批判が保育団体などからあり、基準を最終決定する自治体の判断が注目されていた。(仙台)市は18日に開いた社会福祉審議会児童福祉専門分科会で基準案を提示、「保育の質を保つ上で一定程度の上乗せが必要と判断した」と説明した。

(河北新報「仙台市14年度導入「小規模保育」 保育士3分の2以上」より。 2013/10/19)

保育の仕事は負担も大きい。夜間対応、食品アレルギーの対応などのほか、命につながる責任を負う。現在の賃金でも、資格がなくても保育に従事する人は増えるのか。待機児童問題の解決に向けた政府の対策が、うまく作用するかに注目が集まる。

待機児童問題の解消に向けた、保育士確保の取り組みと賃金事情についてあなたはどう考えますか。ご意見をお寄せください。

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※NHKニュース『保育士希望せず 理由の半数は「賃金」』の内容がアップデートされた為、引用内容を更新(当初掲載時の、保育士の平均賃金を214万2000円から21万4000円(月額)へ、また、補助金支給開始次期について昨年度から今年度へ変更した。2013/10/23 05:16)

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