「みんな死にかけてる、助けてくれ!」難破船にすし詰めの難民、救助されず沈没 最後の記録音声

「助けてくれ、水が(ボートに)流れ込んでいる」
Reuters

注意:この動画の音声、および以下の掲載画像は、凄惨な内容を含んでいます。

すし詰め状態のボートでヨーロッパへ向かっていたシリア難民数百人が、沈みゆく船からイタリア沿岸警備隊に救助を要請した。リークされた記録音声から、難民らが繰り返し救助を求める様子が確認できる。しかし、当局は難民らの救助要請に応じようとせず、国際法に違反した疑いがある。

最初の要請から5時間が経過するまで、一切の救助措置が講じられず、268人が亡くなった。

イタリアの週刊誌「L’Espresso」 が5月8日、2013年10月11日のやり取りを記録した音声を入手、公開した。音声は、上に掲載した動画で聞くことができる。

記録音声には、ボートに乗っていたシリア人のひとり、モハナド・ジャモ医師が、数回の無線連絡を通じてイタリア沿岸警備隊に救助を求める声が残っている。ボートは、多くの移民や難民の到着地となっているシチリア州ランペドゥーサ島からわずか60海里(約111キロメートル)のところに位置していた。

現地時間午後12時39分、ジャモ医師は沿岸警備隊に最初の連絡をとり、「助けてくれ、水が(ボートに)流れ込んでいる」と訴えた。「お願いだ、急いでくれ、急いでくれ。ボートが沈んできている」

ゴムボートの上で亡くなり、船上に横たわる移民・難民らの遺体。 2016年10月5日、地中海リベリア北方にて。ARIS MESSINIS VIA GETTY IMAGES

ジャモ医師は午後1時17分に再度救助を要請したが、オペレーターは、イタリアではなくマルタ共和国の当局に連絡を取るようにと応じた。

「あなた方はマルタの近くにいます」と、オペレーターは言ったが、そうではなかった。船の位置は、マルタから南方へ約190キロメートル離れていた。

午後1時48分、ジャモ医師はもういちど救助要請を試みたが、返答は同じだった。

ジャモ医師は「みんな死にかけてる、助けてくれ!」と応答した。

マルタとイタリアの当局は、午後4時44分、電話を通じて話し合った。イタリア海軍の船舶「ナーベ・リーブラ」が、転覆しかかっているボートからほんの数キロ地点に配備されていた。しかしイタリア沿岸警備隊は、難民救助のために同船を派遣するのに乗り気ではないようだった。記録音声によると、その理由は、難民らを救助すればこの海域で、イタリア海軍が唯一保持する船舶であるナーベ・リーブラが使用不能になりかねなかったからだ。

しかし、午後5時7分、マルタの航空隊が転覆し始めているボートを捕捉すると、イタリア当局はようやく、窮地に陥ったボートに向けてナーベ・リーブラを送り出した。最初の無線連絡から5時間が経過していた。ボートの乗員数は計480名。そのうち半数以上が溺死した。

イタリア海軍の船舶内で下船を待つ移住者たち。2016年1月20日、南イタリア、シチリア島パレルモ港にて。

地中海での捜索・救助任務が手一杯の状態なのは疑いようもない。しかし国際法では、危機に陥った船に一番近い国の当局が、救助の義務を負うと規定されている。

今、そういった救助任務がかつてないほど複雑になり、数も増加している。したがって、たまたま近くにいるイタリア海軍の船舶が1隻しかなかったのも、それほど意外なことではない。しかしイタリアは、南方の島々を目指してやってくる移民への対応に、数十年間も取り組んでいる

ここ数年で何万人もの人々がヨーロッパへの入り口として地中海を渡ろうとしている。このような難民への対応として、国際社会は2013年以来、捜索・救助の取り組みを本格的に強化している。現在、EU加盟国の大半といくつかのNPOが、地中海での定期任務を行っている。

大きなリスクをはらんでいるのが明らかであるにも関わらず、難民・移民は、ヨーロッパでの新たな生活を求めてゴムボートに乗り込み、自らの命を危険にさらし続けている。国際移住機構によると、2017年ヨーロッパに流入した難民・移民は5月7日の時点で4万9310人。渡航中の死者数は1309人に上っている。5月6〜7日だけでも、6000人以上が救助された。

2016年は年間で18万7569人が到着したが、2017年は、現時点で死者数が2016年の同時期とほぼ同じ規模となっている。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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