避妊や中絶を支援する医療団体への助成停止、アメリカ下院議会が可決

「現代で最悪の法案です」
Speaker of the House Paul Ryan smiles as he departs a meeting at the U.S. Capitol before a vote to repeal Obamacare in Washington, D.C., U.S., May 4, 2017. REUTERS/Kevin Lamarque
Speaker of the House Paul Ryan smiles as he departs a meeting at the U.S. Capitol before a vote to repeal Obamacare in Washington, D.C., U.S., May 4, 2017. REUTERS/Kevin Lamarque
Kevin Lamarque / Reuters

アメリカ下院議会は5月4日、メディケイド(州が運営する低所得者向けの医療補助制度)の費用で人工妊娠中絶や避妊薬を処方する医療NGO「プランド・ペアレントフッド」(家族計画連盟 / PP)を助成することを禁止する医療保険法案を可決させた。この法案の成立により、およそ39万人の低所得層の女性が避妊薬の処方や予防医療を受けられなくなる可能性がある。

2010年に共和党が下院で多数派を占めるようになって以来、PPへの助成停止に向けた動きが見られる。これはPPのクリニックの一部で人工妊娠中絶手術が提供されているためだ。下院が提出した法案は医療費負担適正化法(アフォーダブル・ケア・アクト、通称オバマケア)の代替法案となるが、PPが提供している避妊やパップスメア(子宮頸がん検査)、性病の検査などの予防医療サービスをメディケイドの費用で補償することができなくなる。PPがサービスを提供している患者のうち約60パーセントを占める250万人が、公的支援による医療に依存している。法案が成立すれば、この250万人は手頃な料金の家族計画業者を新たに探さなければならなくなる。

共和党が提出した代替法案はこれから上院で審議されるが、上院での採決は難しいとみられる。しかし上院でも可決され、ドナルド・トランプ大統領が署名すれば、メディケイドからPPへの助成金が1年間停止される。

マイク・ペンス副大統領は3日夜、プロライフ(人工妊娠中絶手術の合法化に反対)を支援する団体が毎年実施するイベントに参加して、法案に賛成票を投じるよう訴えた

「オバマケアが成立した日は、命の尊厳にとって失意の日でもありました。それでも、希望の光がやっと見え始めています」と、ペンス氏は語った。「この代替法案が可決すれば、命の決定的な勝利につながるでしょう」

PPの資金援助停止は有権者に不人気だ。最近の世論調査でアメリカ人の75%は、連邦政府が資金援助を続けるべきと回答しており、またFOXニュースの世論調査ではバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州)とPPがアメリカの政治関連の人物・団体の中で最も好感度が高いことがわかった。ヒラリー・クリントン前国務長官はPPの100周年記念式典で演説し、この団体を通して家族計画に資金が投じられているおかげで、国内の10代の妊娠はこの30年で最も少なく、また望まない妊娠も40年で最も少なかったと指摘した。

「中絶に反対する人は、望まない妊娠を防ぎ、経済的な機会を拡大し、本当にペアレントフッドをサポートする政策のために闘うべきです」と、クリントン氏は訴えた。

共和党は、資金援助が停止しても、PPの患者は連邦政府が認可する医療センターで十分受け入れることができると主張している。

「PPの人たち全員のために、20の連邦地域医療センターがある」と、ポール・ライアン下院議長(共和党、ウィスコンシン州)は1月にタウンホールの集会で主張した。「医療センターは巨大なネットワークがあり、多くの医療サービスがある。また、こうした中絶問題をめぐって論争を引き起こすことなく、同等のサービスが提供される」

問題は、ライアン氏の主張には歯科医、ホームレス施設、フードバンク、メンタルクリニック、美容外科医や他の施設も含まれていることだ。そうした場所では女性の健康と家族計画に関する医療サービスを提供していない。2014年、連邦政府公認の医療センターのうち、PPが実施する避妊関係のサービスが受けられるのは3分の1程度だということが、議会調査局(CRS)の調査で明らかになった。さらに、そうした場所の受診待ち時間の平均は、地元のPPのクリニックでかかる時間の2倍以上になる。

「トランプ政権と議員の両方が、アメリカの人口の51%に関心を払ってくれることを願っています。女性たちは将来に大きな不安を感じているのです」と、PPのセシル・リチャーズ会長は、ハフポストUS版のインタビューで語った。「ほぼ男性のみの部屋で政策が決定されており、自分たちが直接影響を受けない問題について決議していることを考えると、とても苛立たしい。この国の何百万人もの女性を代表する人がいないのです」

「これは女性の健康に関する、現代で最悪の法案です。望まない妊娠の防止、健康的な妊娠、家族を養うことはさらに難しくなります」。 共和党の法案が下院を通過した後、リチャーズ会長は語った。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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