トランプ大統領、超法規的殺人が続くフィリピンのドゥテルテ大統領と会談へ

フィリピンの指導者とアメリカ政府の関係がさらに友好的なものになるかもしれない。

これまでに7000人以上が殺害された容赦のない「麻薬戦争」に関与し「処刑人」と称される大統領が、ホワイトハウスへの丁重な招待状を受けとった。

ドナルド・トランプ大統領は4月29日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領と電話で会談し、ワシントンへの訪問を呼びかけた。会談について、ホワイトハウスは「非常に友好的な対話」だったと述べた。

今回の招待には、非自由主義的な国の指導者を称賛し、公の場で交流しようというトランプ氏の姿勢が改めて反映されている。エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シーシ大統領やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と同様、ドゥテルテ氏は、人権侵害や独裁的な傾向を強めて非難を浴びている指導者の1人だ。トランプ大統領はこうした指導者について、容認する姿勢を示している。

ドゥテルテ氏は2016年のフィリピン大統領選の最中、「就任したら腐敗した官僚や警察は皆殺しにする」と公約し、挑発的な発言を繰り返したことで世界的な注目を浴びた。また、「レイプ殺人事件の被害者は美しかった。私が最初にやるべきだった」と発言したり、ローマ法王フランシスコを「くそったれ」と呼んだりもした。

ポピュリスト的な物言いとアウトサイダー的な性格のため、ドゥテルテ氏は西側のメディアで「フィリピンのドナルド・トランプ」と呼ばれることが多かった。しかし彼自身は2016年、「トランプは偏狭な人間だが自分はそうではない」と発言している。権力を手にするまでの過程はドゥテルテ氏は独自のものがあり、トランプ氏とは多くの面で異なる。しかし、既存の政治に反旗を翻し、有権者にアピールすることで2016年に権力を手にした点は一致する。

トランプ氏が大統領選で公約した主要な政策の実現に苦労する中、ドゥテルテ大統領は容赦なく公約の多くを実行に移している。大統領の「麻薬戦争」により、1年足らずで少なくとも7000人が死亡した。その多くは、薬物の売人や使用者を殺すことを大統領から奨励された、自警団が超法規的に行ったものだ。

メトロマニラのペッシグで、警察の言う「薬物がらみの自警団による殺人」で殺害された人物の遺体を見張る警官。ERIK DE CASTRO / REUTERS

複数の人権団体からこうした暴力行為が報告されており、フィリピン警察は超法規的な殺人を犯しながら免責されていると非難を受けている。警察は自己防衛を主張し、証拠捏造などの不正も横行している。フィリピンの報道カメラマンはこのような殺人の状況を夜通しで観察し、マニラの通りに遺体があふれている様をとらえている。親族は取り乱した様子で犠牲者を悼み、4歳の子供までもが流れ弾の犠牲者となっている。

2016年10月に韓国人ビジネスマンが拉致、殺害された事件を受け、2017年の2月以降、こうした過激な麻薬取り締まりは若干減少したが、死者数は増え続けている。

ドゥテルテ大統領は、「麻薬戦争」は成功していると主張をしている。そして、この手の殺人に異議を唱えているレイラ・デ・リマ上院議員を「麻薬取引に関与している」と糾弾している。また人権団体にも矛先を向け、血まみれの麻薬撲滅運動を2022年の任期末まで続けると誓った。

2016年8月には、「撃ち殺せというのが私の命令だ。人権なんて気にしない。私を信じるがいい」と発言した。

2017年3月13日、マニラの大統領府での記者会見後に記者に話すフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。ERIK DE CASTRO / REUTERS

フィリピンにとってアメリカは主要な政治・軍事同盟国だが、ドゥテルテ氏が大統領になって以来、その忠義的な関係にひびが入っていた。ロシアや中国との関係強化の姿勢を見せる一方、フィリピンに駐留しているアメリカ軍の撤退を要求し、個人としては長年、アメリカに対して恨みを抱いている

ホワイトハウスは2016年9月、バラク・オバマ前大統領とドゥテルテ氏との会談を中止したが、これに先立ってフィリピンの指導者はオバマ氏を「プータン・イナ・モ(くそったれ)」と呼び、「地獄に落ちろ」と発言していた。10月に北京を訪れた際には、「私はアメリカとの離別を宣言する」と述べている。

このような反アメリカ的な発言にも関わらず、アメリカ政府に対して具体的に政策変更する可能性は低い、と専門家は見ている。ドゥテルテ氏が大統領になって以降も、アメリカとフィリピン両政府のスタッフは両国の重要な関係性についてたびたび言及している。両国は南シナ海の問題や北朝鮮で加速する核開発について懸念を共有しており、29日の電話会談でも北朝鮮問題が話し合われた。

電話会談に言及したホワイトハウスの報道発表では、両首脳が「世界の多くの国にとって悩みの種である麻薬を国から一掃しようと、フィリピン政府の懸命な対策を議論した」と述べられている。そしてトランプ大統領は「楽しく会話」し、地域の安全保障や、11月のトランプ氏のフィリピン訪問についても話し合ったとしている。

ドゥテルテ氏のホワイトハウス訪問により、フィリピンの指導者とアメリカ政府の関係がさらに友好的なものになるかもしれない。特に麻薬戦争で数千人に及ぶ犠牲者からトランプ氏が目を背けるなら、なおさらだ。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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