小林よしのり氏、漫画の将来に危機感「スマホに食われて勢いがなくなってきた」

『こち亀』40周年記念パーティーに出席した小林よしのり氏が感じたこととは。
Taichiro Yoshino

週刊少年ジャンプでの連載が終了した『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の40周年記念パーティーが10月24日に開催され、人気漫画家たちが出席。『すすめ!!パイレーツ』などで知られる漫画家の江口寿史氏が、その様子をTwitterで報告している。

このパーティーには、『東大一直線』や『おぼっちゃまくん』などで知られる小林よしのり氏も出席したことを自身のブログで報告した。

小林氏によると会場には、ちばてつや氏、さいとうたかを氏、藤子不二雄A氏など、漫画界の「レジェンド」の姿もあったという。また、『ジョジョの奇妙な冒険』の作者である荒木飛呂彦氏が、小林氏と秋本氏のところまで挨拶にきたと記している。

世代を超えた数多くの漫画家が集う姿を見て小林氏は、ブログにこう綴っている。

ときわ荘の頃の第一世代がいて、それがもう大長老。

次の世代に永井豪あたりがいて、

第三世代が秋本治やわしやコンタロウや江口寿史なのだろうか?

ギャグ漫画の全盛期だ。

第四世代に荒木飛呂彦がいて、その下はもう知らない世代だ。

漫画家の老け具合を見るのが面白かった。

秋本治氏の「こち亀」40周年パーティーに行ってきたより 2016/10/24)

その一方で小林氏は、今の漫画界を憂う言葉を記している。

しかし漫画も最近はスマホに食われて勢いがなくなってきた。

レジェンドが没すれば、漫画そのものが終わってしまう

恐れもあるのではないかと最近思う。

歌謡曲が隆盛を終えたように、漫画も衰退する可能性はある。

秋本治氏の「こち亀」40周年パーティーに行ってきたより 2016/10/24)

内閣府の「青少年のインターネット利用環境実態調査結果」によると、青少年(満10歳から満17歳)が携帯電話・スマートフォンでインターネットを利用する平均時間は平成21年度には77.5分だったが、平成25年度は107.4分に増加した。

スマートフォンなどの使用時間が拡大するのと反比例するかのように、漫画界の冷え込みは厳しい。公益社団法人全国出版協会の「2014 出版指標 年報」によると、雑誌と単行本を合わせたコミック市場全体の販売額は12年連続でマイナスとなり、2014年には4000億円を割った。2014年以降、「月刊IKKI」(小学館)「月刊コミックガム」(ワニブックス)など漫画雑誌の休刊が相次いでいる。

■電子書籍に期待する声も

一方で、電子書籍市場は年々拡大を続けている。株式会社インプレスによると、2015年には電子書籍市場は1584億円と前年から25.1%増加。そのうち81%(1277億円)をコミックが占めるという。

ネット通販大手のアマゾンジャパンと大手出版社が組んだ電子書籍の「定額読み放題サービス」も8月にスタートし、話題となった。だがサービス開始から間もなく、読み放題のラインナップから人気作品が外され、講談社がアマゾン側に「一方的に配信を停止された」と抗議するなどのトラブルもおこった。

出版業界内では、電子書籍によって読者が作品に接する機会を増やせるのではとの期待もある。その一方で、再販制度に守られた紙の書籍が売れなくなることへの懸念も強い。

急速に普及する電子書籍について、漫画家たちはどう考えているのだろうか。漫画家の鈴木みそさんは、2015年8月に開かれたセミナーでこう語っている。

鈴木さんは電子化により作家が読者に直接、作品を届けやすくなっていると指摘。「ただ、自分がどんな作家なのかを考えて、自分をプロデュースしていくことが求められる」と語った。また、ツイッターなど複数のメディアを使って作品を紹介している自身を例に、「うっとうしく思われるぐらいに宣伝しても、届いていない人がいる。コツコツと名前を売るしかない」と話した。
(朝日新聞・京都版 2015年8月2日付朝刊より)

漫画界の将来を憂いた小林よしのり氏は、ブログの最後をこう結んでいる。

わしも描かねばならぬ。大いに描かねばならぬ。

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小学館ビルのロビーに描かれた「落書き」

小学館ビルの「落書き」写真集


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