ポール・クルーグマンがトランプ氏批判「優れたビジネスマンは、マクロ経済の知識ない」

「人種的対立が、トランプ支持者を見分ける格好の目印だ」

ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏

アメリカ大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が支持されるのは、誇張する形で自由貿易に反対する彼が、アメリカ国内の雇用市場を改善してくれるのではという期待につながっているからだ、という分析がある。しかし、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏はこうした分析を一刀両断する。

クルーグマン氏によると、トランプ氏は、経済的な困難を移民や有色人種のせいにする、白人低所得者層の人種的な緊張感を利用しているのだという。

「経済的不安は、誰がトランプ支持者かを見分ける最良の指標ではない」と、クルーグマン氏は8月にブルームバーグTVのインタビューで答えている。「人種的対立が、トランプ支持者を見分ける格好の目印だ」

リアリティ番組のスターだったトランプ氏は、自身が「労働者階級の大資産家」であり、そのファシスト的なスタイルと、これまでの伝統的な大統領のあり方を否定することで、自身が一般大衆の声を代弁することになる、とぶちあげている。ここ何十年かで雇用が海外に流出し、苦しんでいる工場労働者たちを守ると、彼は誓っている。不景気にあえぐ鉱山業界の雇用を促進するため、最も環境汚染度が高い化石燃料である石炭への制約を減らすとも明言している。

トランプ氏はFoxテレビの番組の「Foxビジネス」で、民主党候補のヒラリー・クリントン氏が公約に掲げた「アメリカ全土で老朽化したインフラの再建費2750億ドル」を「少なくとも倍増させる」と語っている。この公約は、政府歳出を抑えるという共和党正統派の理念とは決別することを宣言したものだ。クルーグマン氏は、マイナス実質金利が政府の借入を利益事業にしている現実があるのにもかかわらず、トランプ氏の公約の実現性に疑問を呈した。

「彼は、『インフラのために借入するべきだ』と誰かが言ったのを聞いていた。そこでテレビ番組に出て、『それが今やるべきことだ』と言っている」と、クルーグマンは言った。

資産と派手な不動産業界での経歴を誇示するトランプ氏は(両方とも父親からの相続だ)、ほとんどの職歴が公的機関であるクリントンよりも、自分の方が優秀な経済のマネジャーになるのは当たり前だと主張している。

「私たちは、ビジネスでの経験が経済政策を回していくのに重要だ、という錯覚を持っている。しかしそれらは、全くの別物だ」と、クルーグマン氏は述べた。「優れたビジネスマンは一般的に、マクロ経済学について何の知識もない」

トランプは、環太平洋連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)といった国際貿易協定を廃止し、メキシコと中国からの輸入品に巨額の関税を課すと公約しているが、それは貿易紛争の火種となりかねない。ムーディーズ・アナリスティクスの報告書によると、1100万人の不法移民を強制退去させ、効果が疑わしい巨大な壁をアメリカ・メキシコ国境に建設するという公約にかかる支出を合算すると、トランプ氏の経済政策はアメリカに大恐慌以来の長期的な不況をもたらす可能性がある。

「彼の中国バッシング、そして『中国の貿易商品がアメリカ経済停滞の原因なのだ』という考えは間違いだ」とクルーグマン氏は言う。「今まさに進行しているのは、何十年にもわたって共和党への投票を促してきた、こうした隠れた本音が、表面化してきているだけだと思われる」

実際に、トランプ氏が大統領選の候補者となったことで、白人優位主義、反ユダヤ主義など、政治のメインストリームでは長らくタブー視されてきた声を増幅させた。白人優位主義の差別団体「クー・クラックス・クラン」(KKK)の元指導者デビッド・デューク氏は、トランプ氏支持を表明した後、アメリカ上院のルイジアナ選挙区に自ら立候補すると発表した。トランプファンとおぼしき集団が、ユダヤ人ジャーナリストに対してサイバー攻撃を企て、伝統的なユダヤ人の名字を持つ人たちを判別し、嫌がらせの対象にしやすいようにするGoogle Chromeの拡張機能を開発するまでに至っている。トランプ氏が長年にわたって女性に対し非常に下品な発言を繰り返していたことは、2015年に初めて明るみに出た。Foxニュースの司会者ミーガン・ケリー氏が、予備選討論会の序盤で彼に答えづらい質問を浴びせたのは、「彼女が生理中だったからだ」と、トランプは発言している。

有色人種、宗教的マイノリティ、女性を侮辱するコメントは数え切れないほどあるのに、トランプ氏は自身が人種差別主義者でも、ミソジニスト(女性嫌悪)でもないと主張しており、メディアは経歴のあら捜しをすることに執着していると攻撃している。

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ハフポストUS版編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた嘘ばかりつき極度に外国人を嫌い人種差別主義者ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサー(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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