「震災と寄付」第1回 あなたは知っていますか? 義援金と支援金の違い

本コラムでは、大規模災害と寄付について3回にわたり取り上げる。初回は義援金と支援金、それぞれの特性について。

九州地域に大きな被害をもたらした平成28年熊本地震から2ヶ月。現地では今なお厳しい状況に直面する人たちがいる。TVや新聞で目にする被災地の現状に、何かしたいと感じる人は多いだろう。

そんな時、真っ先に頭に浮かぶのが寄付だ。しかしどこに寄付をすればいいか。悩むケースも少なくない。

本コラムでは、大規模災害と寄付について3回にわたり取り上げる。初回は義援金と支援金、それぞれの特性について。第2回は企業として寄付をする、その時に考えたいこと。第3回は、筆者が感じる、寄付する際に気を付けたい3つのポイントを解説する。

◆「広くあまねく公平に」なら義援金

大規模災害が発生すると、直後からメディアを通じて一斉に義援金の募集が始まる。日本赤十字社や赤い羽根共同募金で知られる中央共同募金会の義援金受付先がテレビのテロップに流れている様子を見たことがある人は多いだろう。マスメディアを通じて呼びかけられることもあり、震災を始めとする大規模災害における寄付としては最もメジャーな存在だといえる。

義援金とは、簡単に言えば被災者に対して配られる「お見舞い金」を指す。ある日突然、不運にも天災に見舞われる。家族や住む場所、働く場を失う。そうした困難な状況にある被災者1人ひとり(あるいは世帯)に対して、生活再建への足しにと配られるのが義援金だ。集められた義援金は被災の程度に応じて公平に配分される。しかしこの義援金、被災者の手元に渡るまでに時間がかかるのが難点だ(注1)。

もちろん、被災者にとっては急を要するのが現実であるため、「一時お見舞い金」という形で暫定的に義援金を配分する努力は続けられている。また注釈に記載した通り、諸手続きを経て配分されるため、公平性を重視する方には義援金への寄付は重要な選択肢だろう。しかし同時に、義援金の配分には時間がかかるという現実は知っておいた方が良いだろう。

◆今すぐ目の前の人を助けたい!に応えるのは実は支援金

次に支援金である。支援金とは、「被災地の復旧・復興に取り組むNPOやボランティアの活動を支援するための寄付」を意味する。

災害が発生した際、行政だけで全ての問題に対応することは難しい。なぜならば、「行政」そのものも被災しているからである。そうした中で、災害救援の専門性を持つNPOは大きな力を発揮する。

例えばNPO法人ピース・ウィンズ・ジャパンや公益社団法人Civic Force。TV報道でもしばしば取り上げられる団体だが、今回も発災直後からレスキューチームが現地に入り、緊急支援を行っている。

また災害弱者への支援を中心に専門性を発揮する団体も存在する。例えば「一般社団法人全国重症心身障がい児デイサービス・ネットワーク」。全国組織の力を活かしていち早く障がいを抱える子どもたちとその家族を支援、水・食料や医療用品の輸送を行うと共に、障がい児を抱える家庭の県外への一時避難への支援体制づくりを現地のNPO団体や福祉施設等と協力して行った。

「災害弱者」というと遠い存在のように感じるかもしれないが、実際には、近いうちに発生するかもしれない天災に遭遇した、たまたま妊娠中のあなた自身やあなたの配偶者、最愛の娘や孫かもしれない。アレルギーを持つあなたの子どもかもしれない。突然の怪我で、あるいは加齢で手や足が不自由になったあなたの両親・家族・友人かもしれない。

支援金は、実は即効性のある活動を支える役割を果たす。また一律の支援からこぼれおちる災害弱者を応援することに繋がる。民間ならではの柔軟性を活かした支援の形だと言えよう。

◆支援金を集めている具体的な例は?

「支援金」を掲げて寄付を集めている例としては、「日本財団」や「赤い羽根共同募金」の「活動支援金寄付」が挙げられる。どちらもウェブで詳細を確認することが可能だ。

また、クラウドファンディングを活用した寄付も活発だ。例えば寄付型のクラウドファンディング・プラットフォームのひとつ「JAPAN GIVING」には、2016年6月14日時点で約4200件、4200万円に近い寄付が集まっている。このサイトの場合、FacebookやTwitterと連動しており、クレジットカードでの決済も容易、活動への応援コメントも残せるなど、当事者意識が高まる工夫がされている。まずは一度、サイトを覗き、少額でも寄付する体験をしてみてはいかがだろうか。

◆特性を知って寄付を。

テレビや新聞を通じ、水や食料にも事欠く被災者を目の当たりにして、何かしたいと感じる心は尊い。

さらにそこから金融機関やコンビニエンスストアに行き寄付金を振り込む、あるいはウェブサイトから振込先を検索し、クレジットカードで決済する、その具体的で、しかし考えてみれば面倒なアクションを起こせる人が、日本にあるいは世界に少なくない数存在するということを知ると明るい気持ちになる。そしてそうした具体的なアクションを起こせる人が世の中にもっと増えて欲しいと感じる。それであればなおのこと、特性や仕組みを知って自分自身の気持ちをどう届けるか、しっかり考えたい。

公平・公正を軸とし被災者の生活再建を支える義援金と、災害弱者を中心に柔軟に緊急救援ニーズに応えると同時に、息の長い復旧・復興を支える支援金。その特性を知った上で自分のお金をどう活かしたいか、考えることが大切だろう。

(注1)義援金の配分は3つのステップで進められる。最初のステップは「義援金配分割合決定委員会」での方針決定である。日本赤十字社や中央共同募金会、報道機関などの構成員からなるこの委員会では、集まった義援金をどのように配分するか方針が定められ、この方針に従って被災した都道府県ごとにいくらずつ送金するのかが決められる。

次のステップは「配分委員会」の設置である。これは都道府県ごとに設置され、この決定を基に各都道府県から市町村に義援金が送金される。最後のステップは市町村から被災者の手元への送金である。もちろん、義援金の申請や受け取りには各種書類が必要だ。口座などの振り込み先情報に加えて、住宅被害であれば「罹災証明」が、死亡や行方不明者に対する義援金であれば、戸籍謄本や死亡診断書が必要とされる。

しかし緊急時にこうした書類を揃えることは容易ではない。メディアでも報道されている通り、罹災証明の交付には時間がかかる。被災した市町村は多くの仕事を抱えており、他市町村からの応援はあれど、通常業務すらままならないのが現実だ。また罹災証明は判定結果への不服申請も相当数存在する。

今回の申請は熊本県内だけで約12万2千件。その中から既に4,000件を超える不服申請が出されている。新聞報道では、熊本県内での義援金は、25の市町村に約7億5千万円が送金されたものの被災者には殆ど届かず、受領者は1世帯10万円のみに留まっていることが報じられた。(共同通信、2016年5月24日)

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